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なぜ歯石除去に保険が適用されるのか
歯科医院で歯石除去を受ける際、多くの場合は健康保険が適用され、比較的安価な自己負担で処置を受けることができます。一方で、審美目的のホワイトニングなどが保険適用外であることから、「歯石取りも見た目をきれいにするための一種なのに、なぜ保険が使えるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。その答えは、歯石除去が単なる美容目的のクリーニングではなく、歯周病という「病気」を予防し、治療するために不可欠な「医療行為」であると、国が認めているからです。日本の健康保険制度は、病気の治療や、その予防に直接つながる医療行為に対して適用されるのが基本です。そして、歯石は、歯周病という国民の多くが罹患している深刻な病気の、最大の原因であることが科学的に証明されています。歯石のザラザラした表面は、歯周病菌の温床となり、歯茎に慢性的な炎症を引き起こします。この炎症を放置すれば、歯を支える骨が溶け、最終的には歯を失うことにつながります。さらに、近年の研究では、歯周病菌が血流に乗って全身を巡り、糖尿病や心疾患、脳梗塞といった全身の様々な病気を引き起こしたり、悪化させたりするリスクがあることも分かってきています。つまり、歯周病はもはや口の中だけの問題ではなく、全身の健康を脅かす病気なのです。このような背景から、歯周病の原因となる歯石を除去することは、口腔内の健康を守るだけでなく、国民全体の健康寿命を延ばす上でも非常に重要であると位置づけられています。したがって、歯科医師が診察の結果、「歯周病」あるいはその前段階である「歯肉炎」という病名を診断し、その治療の一環として歯石除去を行う場合、それは明確な医療行為となり、健康保険が適用されるのです。ただし、保険診療にはルールがあり、一度に全ての歯石を取りきるのではなく、通常は上下の歯で分けたり、数回に分けたりして、歯茎の状態の変化を確認しながら計画的に進めていきます。歯石除去に保険が使えるのは、それだけ歯石を放置することが、あなたの体にとって「病的な状態」であるという、国からのメッセージでもあるのです。