大人の歯(永久歯)だけでなく、子供の歯(乳歯)も虫歯になれば、もちろん歯髄炎を起こします。しかし、子供の歯髄炎は、大人の場合とは少し異なる特徴があり、親がそのサインに早く気づいてあげることが非常に重要です。なぜなら、子供は自分の症状を的確に言葉で表現することが難しく、発見が遅れがちになるからです。乳歯は、永久歯に比べてエナメル質や象牙質が薄く、柔らかいため、虫歯の進行が非常に速いのが特徴です。昨日まで小さな点だった虫歯が、気づいた時には神経の近くまで達している、ということも珍しくありません。また、子供の歯髄は再生能力が高く、炎症に対する反応も大人とは異なります。そのため、大人のような「夜も眠れないほどの激痛」といった典型的な症状が出にくいことがあります。では、親はどのようなサインに注意すれば良いのでしょうか。まず、最も分かりやすいのは「食事中の変化」です。いつもは好きなものを何でも食べていたのに、急に片側だけで噛むようになったり、硬いものを避けて柔らかいものばかり食べたがったりする。あるいは、食事中に突然泣き出したり、口を気にしたりする仕草が見られたら、それは歯に痛みを感じているサインかもしれません。冷たいものや熱いものを口にした時に、顔をしかめるのも注意すべき兆候です。また、虫歯が進行して歯髄炎になると、歯の色が灰色っぽく変色してくることがあります。他の歯と比べて、一本だけ色がくすんで見える場合は、中で神経が死にかけている可能性があります。さらに、歯茎をよく観察することも大切です。特定の歯の根元あたりの歯茎が、ぷくっと赤く腫れている場合、それは歯の根の先に膿が溜まり、出口(フィステル)を作っているのかもしれません。子供は痛みを訴えなくても、体は正直にサインを出しています。仕上げ磨きの際に、口の中を隅々までチェックする習慣をつけ、「いつもと違う」と感じることがあれば、たとえ子供が痛がっていなくても、早めに小児歯科を受診してください。乳歯の歯髄炎を放置すると、後から生えてくる永久歯の形成に悪影響を及ぼす可能性もあります。早期発見・早期治療が、子供の未来の歯並びと健康を守る鍵となるのです。
子供の歯髄炎に親が気づくべきサイン