歯周病ケア用の歯磨き粉を選ぶ際、多くの方が気にするポイントの一つに「研磨剤(清掃剤)」や「発泡剤」の有無があります。これらの成分は、多くの歯磨き粉に当たり前のように含まれていますが、歯周病に悩む人にとっては、その存在がメリットにもデメリットにもなり得ます。それぞれの役割とリスクを正しく理解し、自分の口の状態に合った選択をすることが大切です。まず「研磨剤」についてです。研磨剤は、炭酸カルシウムや無水ケイ酸といった微粒子で、歯の表面に付着した着色汚れ(ステイン)や歯垢を、物理的に削り落とす役割を担っています。これにより、歯本来の白さを保つ効果が期待できます。しかし、歯周病が進行して歯茎が下がってくると、本来は象牙質で覆われているはずの歯の根(歯根)が露出してきます。この歯根部分はエナメル質よりも柔らかく、研磨剤が強く配合された歯磨き粉でゴシゴシ磨くと、削れてしまい、知覚過敏の原因になることがあります。また、弱っている歯茎自体を傷つけてしまう可能性も否定できません。そのため、歯周病に悩む方は、研磨剤の配合量が少ない「低研磨性」のものや、「研磨剤無配合」と記載された製品を選ぶのが一つの賢明な選択と言えます。次に「発泡剤」です。ラウリル硫酸ナトリウムなどが代表的な成分で、歯磨きの際に豊かな泡立ちを生み出します。この泡によって、有効成分が口内の隅々まで行き渡りやすくなるというメリットがあります。また、泡による爽快感が「しっかり磨けた」という満足感につながり、歯磨きのモチベーションを維持する助けにもなります。しかし、その一方で、泡立ちが良いと、実際には十分に磨けていないのに「磨けた気」になってしまい、ブラッシング時間が短くなる傾向があるというデメリットも指摘されています。歯周病ケアで最も重要なのは、一本一本の歯を丁寧に、時間をかけて磨くことです。そのため、じっくりと腰を据えてブラッシングに取り組みたい方には、泡立ちを抑えた「低発泡タイプ」や、泡が立たない「ジェルタイプ」の歯磨き粉がおすすめです。どちらが良い悪いということではなく、自分の歯茎の状態や磨き方の癖を考慮して、最適なバランスのものを見つけることが重要です。