歯石という言葉は、テレビCMや歯磨き粉のパッケージなどで頻繁に目にしますが、その正体が一体何なのかを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。歯石とは、一言で言うと「歯垢(プラーク)が石のように硬く変化したもの」です。その成り立ちを理解するためには、まず歯垢について知る必要があります。歯垢は、よく食べかすと勘違いされがちですが、実際は全くの別物です。歯垢の正体は、口の中にいる細菌とその代謝物、そして食べ物に含まれる糖分などが混ざり合ってできた、ネバネバとした白い塊です。つまり、歯垢は「生きた細菌の塊」なのです。この歯垢は、食後わずか数時間で形成され始め、歯の表面に強く付着します。毎日の歯磨きは、この歯垢を取り除くために行っています。しかし、歯磨きが不十分で、歯の表面に歯垢が残ったままになっていると、奇跡のような、しかし口の中にとっては恐ろしい変化が起こります。私たちの唾液には、カルシウムやリンといったミネラル成分が豊富に含まれています。この唾液中のミネラルが、歯に残った歯垢に沈着し、再石灰化というプロセスを経て、歯垢を文字通り石のように硬く固めてしまうのです。この石化した歯垢こそが、歯石の正体です。歯垢がおよそ48時間で歯石に変わり始めると言われています。一度歯石になってしまうと、歯の表面にコンクリートのように強力にこびりついてしまい、もはや毎日の歯磨きで取り除くことは不可能です。歯ブラシでどんなに強く擦っても、びくともしません。そして、この歯石の表面はザラザラしているため、さらにその上に新しい歯垢が付着しやすくなるという悪循環を生み出します。つまり、歯石は新たな細菌の温床となり、虫歯や歯周病のリスクを飛躍的に高める、非常に厄介な存在なのです。歯石とは、日々の歯磨きを怠った結果として生じる、細菌の化石とも言えるでしょう。