私たち人間にとって、歯石が歯周病の大きな原因であることはよく知られていますが、実はこれは、大切な家族の一員である犬や猫といったペットたちにとっても、全く同じことが言えます。むしろ、ペットの口腔環境は人間よりも過酷で、歯石が付きやすく、歯周病が非常に進行しやすいという現実があります。ペットの健康と長生きのために、飼い主が正しい知識を持って口腔ケアに取り組むことが、今、強く求められています。犬や猫の口の中は、人間と違ってアルカリ性に傾いています。このアルカリ性の環境は、歯垢が歯石へと変化する石灰化を、より促進させやすい性質を持っています。そのため、犬ではわずか3日から5日で歯垢が歯石に変わると言われており、人間よりもはるかにスピーディに歯石が形成されてしまうのです。そして、人間と同じように、歯石は歯周病菌の温床となります。歯周病が進行すれば、歯茎が腫れて出血し、強い口臭を放つようになります。さらに悪化すれば、痛みで食事が摂れなくなったり、歯が抜け落ちたり、顎の骨が溶けて骨折したりすることさえあります。また、口の中の細菌が全身に回り、心臓病や腎臓病といった、命に関わる病気を引き起こすことも少なくありません。しかし、ペットは自分で「歯が痛い」と訴えることができません。飼い主が口の中の異変に気づいた時には、すでに歯周病がかなり進行してしまっているケースが非常に多いのが現状です。そうならないために、最も重要なのが、家庭での日々の「歯磨き」です。ペット用の歯ブラシや、指に巻くタイプの歯磨きシートなどを使い、できるだけ毎日、歯垢を落としてあげることが理想です。子犬や子猫の頃から、口の中に触れられることに慣れさせておくことが、スムーズな歯磨き習慣への第一歩となります。そして、すでに付いてしまった歯石は、人間と同様に、家庭でのケアで取り除くことはできません。動物病院で、全身麻酔をかけた上で、専用の器具を使って除去する処置が必要になります。全身麻酔にはリスクも伴いますが、歯石を放置するリスクの方がはるかに大きいのです。定期的に動物病院で口の中をチェックしてもらい、必要であれば適切な処置を受けること。それが、言葉を話せない愛するペットの健康を守る、飼い主の大切な責任なのです。
ペットにも歯石が付く、犬猫の口腔ケア