数年前まで、私は自分の歯茎の健康に無頓着でした。歯磨きは毎日していましたが、使う歯磨き粉にこだわりはなく、特売品や家族が買ってきたものを何となく使っているだけ。そんな私が自分の口の中の異変に気づいたのは、ある朝、洗面台に吐き出した水がほんのり赤く染まっているのを見た時でした。最初は気のせいかと思いましたが、それから毎日のように歯磨きのたびに出血するようになったのです。さすがに不安になり、重い腰を上げて歯科医院へ行くと、歯科医師から告げられたのは「中等度の歯周病」という診断でした。ショックでした。まだ若いと思っていたのに、歯を失う可能性もある病気だなんて。その日から、私の意識は変わりました。治療として歯石を徹底的に除去してもらい、歯科衛生士さんから正しい歯磨きの方法を、まるで子供のように一から教わりました。そして、その時に強く勧められたのが、歯周病ケアに特化した歯磨き粉を使うことでした。衛生士さんは言いました。「一番大事なのは磨き方です。でも、目的に合った歯磨き粉は、あなたの努力を後押ししてくれますよ」と。その言葉を胸に、私はドラッグストアのオーラルケアコーナーに向かいました。ずらりと並んだ歯磨き粉の箱に書かれた成分表示を、一つ一つ食い入るように見比べました。私の最大の悩みは「出血」だったので、まずは歯茎の炎症を抑える「トラネキサム酸」や「グリチルリチン酸ジカリウム」が配合されていることを絶対条件にしました。そして、ぶよぶよし始めた歯茎を引き締める効果を期待して、「塩化ナトリウム」が入っているものを選びました。味や泡立ちは二の次で、とにかく成分を重視したのです。その歯磨き粉と、教わった丁寧なブラッシングを毎日続けました。すると、一ヶ月も経つ頃には、あれほど悩まされていた歯磨き時の出血が、明らかに減っていることに気づきました。歯磨き粉を変えただけで治るわけではありませんが、自分の症状に合った製品を選び、真剣にケアに取り組んだことが、確かな結果につながったのです。あの日の出血は、私の体からの警告でした。それに気づき、自分の口と向き合うきっかけを与えてくれたことに、今では感謝しています。