歯髄炎と一括りに言っても、実はその進行度によって二つの種類に分類されます。それが「可逆性歯髄炎(かぎゃくせいしずいえん)」と「不可逆性歯髄炎(ふかぎゃくせいしずいえん)」です。この二つの違いを理解することは、自分の歯が今どのような状態にあるのかを知り、治療法を理解する上で非常に重要です。まず「可逆性歯髄炎」は、その名の通り、まだ元の健康な状態に戻る(可逆性)可能性がある、比較的初期段階の歯髄炎です。主な原因は、神経に近いところまで進行した虫歯や、歯を削る治療の際の刺激などです。この段階での特徴的な症状は、冷たい水や甘いものを口にした時に、一過性の鋭い痛みが走ることです。しかし、その刺激がなくなれば、痛みはすぐに(数秒から数十秒で)消失します。何もしなければ痛くない、というのが大きなポイントです。この段階で虫歯を発見し、適切に治療すれば、神経を保護する薬を詰めるなどして、歯髄(神経)を保存できる可能性が十分にあります。つまり、神経を抜かずに済むかもしれない、最後のチャンスとも言える状態です。次に「不可逆性歯髄炎」は、炎症がさらに進行し、もはや元の状態には戻れない(不可逆性)段階の歯髄炎です。ここまでくると、歯髄の損傷は深刻で、症状も大きく変化します。冷たいものだけでなく、熱いものを口にすると、ズキンと激しい痛みが現れ、その痛みが数分以上も持続するのが特徴です。さらに進行すると、何もしていなくても、ズキズキと脈打つような自発痛が起こり、夜も眠れないほどの激痛に襲われるようになります。この段階になると、残念ながら歯髄を保存することはできません。炎症を起こした歯髄は、細菌に汚染された感染源となってしまっているため、完全に取り除き、歯の根の中を清掃・消毒する「根管治療」、つまり神経を抜く治療が必要不可欠となります。冷たいものがしみる、という初期のサインを見逃さず、できるだけ早く歯科医院を受診することが、自分の歯の神経を守り、歯の寿命を延ばすために何よりも大切なことなのです。
歯髄炎の種類で変わる痛みと治療法