抜歯後の激痛、ドライソケット。その辛さを経験した人は、二度と味わいたくないと心から願うでしょう。幸いなことに、ドライソケットは、抜歯後のいくつかの簡単な注意事項を、患者さん自身がしっかりと守ることで、その発症リスクを大幅に減らすことができる、予防可能な合併症です。歯科医師の指示を正しく理解し、実践することが、あなたの身を守るための最大の防御策となります。予防の鍵は、抜歯窩に形成される「血餅(けっぺい)」を、いかにして守り育てるか、という一点に尽きます。1. 強いうがいをしない:これが最も重要な注意事項です。抜歯後、少なくとも24時間は、ブクブクと強くうがいをするのは絶対にやめてください。できれば、48時間程度は控えるのが理想です。口をゆすぎたい場合は、水を口に含み、頭を傾けて、そっと吐き出す程度に留めましょう。2. 傷口を触らない・吸わない:気になって、舌や指で傷口を触るのはNGです。また、ストローで飲み物を吸う、麺類をすする、タバコを吸うといった、口の中に陰圧をかける行為は、血餅を吸い出してしまう「吸引力」となるため、抜歯後数日間は避けましょう。3. 激しい運動や長時間の入浴、飲酒を避ける:これらの行為は、全身の血行を良くし、血圧を上昇させます。その結果、傷口から再び出血(再出血)しやすくなり、血餅が洗い流されてしまう原因となります。抜歯当日は、シャワー程度にし、安静に過ごしましょう。4. 喫煙を控える:タバコは、ドライソケットの最大のリスク因子の一つです。ニコチンが血管を収縮させて傷口の血行を悪くし、良好な血餅の形成を妨げます。また、吸うという行為自体が、血餅を剥がすリスクになります。可能であれば、抜歯前から禁煙し、少なくとも抜歯後、傷口が安定するまでの1週間は、禁煙を徹底することが強く推奨されます。5. 処方された薬を正しく服用する:歯科医院から処方された抗生物質や消炎剤は、感染を予防し、炎症を抑えるために重要です。医師の指示通り、きちんと飲み切りましょう。これらの注意事項は、ほんの数日間の我慢です。この短い期間の慎重な行動が、あの耐え難い痛みからあなたを解放し、順調な回復へと導いてくれるのです。
ドライソケットは予防できる!抜歯後に守るべき注意事項