抜歯後の激痛を引き起こすドライソケットは、全ての抜歯で起こるわけではありません。その発生率は、全体の数パーセント程度と言われていますが、いくつかの明確な原因と、発症しやすくなる「リスク因子」が存在します。これらを事前に知っておくことは、ドライソケットを予防し、痛みを回避するために非常に重要です。ドライソケットの直接的な原因は、抜歯した穴を保護するはずの「血餅(けっぺい)」が、剥がれたり、溶けたり、あるいはそもそも形成されなかったりすることです。では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。最も多い原因の一つが、「強いうがい」です。抜歯後、口の中の血の味が気になり、何度も強くブクブクうがいをしてしまうと、せっかくできかけた柔らかい血餅が、水圧で洗い流されてしまいます。同様に、ストローで飲み物を吸う、麺類をすするといった、口の中に陰圧をかける行為も、血餅が剥がれる原因となります。次に、「抜歯窩への過剰な刺激」も大きな原因です。気になって舌や指で傷口を触ったり、歯ブラシでゴシゴシこすったりすると、血餅が物理的に剥がれてしまいます。硬い食べ物や、香辛料などの刺激物が傷口に当たることも、リスクを高めます。また、いくつかの「リスク因子」は、ドライソケットの発症率を高めることが知られています。まず、「抜歯の難易度」です。特に、下の親知らずの抜歯は、骨が硬く、抜歯に時間がかかったり、骨を削ったりすることが多いため、他の歯に比べてドライソケットになりやすい傾向があります。これは、抜歯時の侵襲(ダメージ)が大きく、血餅が作られにくい環境になるためです。次に、「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血行を悪化させます。これにより、傷口への血液供給が減少し、良好な血餅の形成が妨げられます。また、タバコを吸うという行為自体が、口の中に陰圧を生じさせ、血餅を剥がすリスクにもなります。「経口避妊薬(ピル)の服用」も、女性ホルモン(エストロゲン)の作用により、血餅を溶かす線溶活性を高めるため、リスク因子の一つとされています。その他、糖尿病などの全身疾患や、口腔内の衛生状態が悪いことも、傷の治りを遅らせ、ドライソケットのリスクを高めます。これらの原因とリスクを理解し、抜歯後の注意事項をしっかりと守ることが、あの辛い痛みを避けるための、最善の予防策となるのです。
なぜドライソケットになるのか?痛みを招く原因とリスク因子