抜歯後の痛みが日に日に強くなり、ドライソケットかもしれない、と不安になった時、最も重要なのは、自己判断で我慢し続けるのではなく、速やかに抜歯を行った歯科医院を受診することです。ドライソケットは、自然治癒を待つと、激しい痛みが長期間続く上に、治癒が遅れる可能性があります。歯科医院での適切な処置を受けることが、辛い痛みから解放されるための、最も確実で早い道筋です。歯科医院では、まず問診で痛みの状況を詳しく聞き取り、抜歯した部分(抜歯窩)の状態を直接診察して、ドライソケットであるかどうかを診断します。診断が確定した場合、治療の主な目的は「痛みの緩和」と「傷口の保護・治癒促進」の二つです。治療の第一歩は、「抜歯窩の洗浄」です。ドライソケットの抜歯窩には、食べ物のカスや唾液、細菌などが溜まり、骨を刺激して痛みを引き起こしています。そのため、まず局所麻酔をした上で、生理食塩水などを使って、抜歯窩の内部をきれいに洗浄し、これらの刺激物を徹底的に洗い流します。この洗浄だけでも、痛みはかなり軽減されます。次に、洗浄してきれいになった抜歯窩に、「薬剤を填入(てんにゅう)」します。これは、剥き出しになった骨を保護し、痛みを和らげ、感染を防ぐための処置です。抗生物質や鎮痛作用のある成分を含んだ、軟膏やスポンジ状の薬剤を、抜歯窩の中にそっと詰めます。これにより、外部からの刺激が直接骨に届かなくなり、痛みが劇的に和らぎます。この薬剤は、徐々に溶けて吸収されるタイプのものもあれば、数日後に交換が必要な場合もあります。また、痛みが非常に強い場合には、より強力な痛み止めを追加で処方してくれます。これらの処置は、通常、一度で完了するわけではありません。症状が落ち着くまで、数日間隔で、数回通院し、洗浄と薬剤の交換を繰り返す必要があります。通院のたびに、傷口は少しずつ新しい組織(肉芽組織)で覆われ、痛みも着実に和らいでいくのを実感できるはずです。ドライソケットの痛みは、我慢しても良いことは一つもありません。専門家である歯科医師の適切な処置に委ねることこそが、辛い痛みから抜け出すための、最善の治し方なのです。
ドライソケットになってしまったら?歯科医院での治療法